100年前の真珠ネックレス
曽祖母の真珠ネックレスを、結婚式で身につけたい…
そうして持ち込まれた真珠ネックレスは、黄ばんでくすんだ小ぶりの3連ネックレス。
お客様のお話では、「ひいおばあちゃん」が結婚式で使った物で、すでに100年は経っているとのことでした。
後日拝見させていただきましたが、明治時代、アメリカで結婚式を挙げた時のお写真には、素晴らしく華やかに、美しく真珠ネックレスをまとった若き日の曽祖母と、凛々しく誇らしげな曽祖父のお二人が写っておりました。確かに同じ真珠ネックレスのようにお見受けします。
お写真に写っている真珠ネックレスは、すでに100年の歴史を経て、ご家族に引き継がれてきた大切な宝物です。が、真珠ネックレスは、時間と共に主成分のタンパク質が黄ばみ、カルシウムの表面が荒れて輝きを損ねてしまいます。
何度か糸替えはしているようですが、やはり仕立ても時間の経過でよれて美しさを損ねていました。
パールズ・ホワイトでは、この3連のネックレスをクリーニングして美しさを蘇らせました。しっかりとした巻き厚(厚い真珠層)のおかげで、ちゃんと磨き直しをすることでテリ(立体的な輝き)が蘇ります。金具も使いやすい物に変更することで、これから先も長く使っていただける状態まで仕上げました。(注1)
正確には、ご結婚式のドレス合わせのタイミングで、仮に仕立てたネックレスで長さや色映えをご確認いただきました。それからお式に間に合わせるように本仕立て。
後日、お二人の式のお写真を頂戴いたしました。
なんて美しく気高く華やいでおり、そしてにこやかに身につけていらっしゃるのでしょう!そして真珠ネックレスは、本当に100年以上前のものなのだろうかというほど、馴染んで美しく存在しています。
こうして「ひいおばーちゃん」の真珠ネックレスが「ひ孫」に受け継がれていきました。
良い真珠ほど、ちゃんとお手入れをすれば
長いこと使うことができる。
それを証明する素晴らしい真珠ネックレスです。
これは後日談ですが、お客様から「こんな写真がでてきました」と、こちらの写真を拝見させていただきました。
なななんと!
「真珠王=御木本幸吉」
と一緒にお客様のご曽祖父が写っているじゃありませんか!!
これには驚きましたが、この100年前の真珠ネックレスが素晴らしい理由がよくわかりました。どうやら、アメリカで通訳などのお仕事をしていた時に、日本の真珠王を訪問するアメリカ政府の一行に同行していたらしいのです。そのご縁で、ご結婚に合わせて真珠ネックレスを仕立てたのではないか、とのこと。(注2)
ミキモトは日本ばかりか、今や世界に名だたる名門ジュエラー。養殖真珠を世界に認めさせた日本の真珠産業の祖。そして現在、私どもパールズ・ホワイトもその一員として存在しており、当時出始めの真珠ネックレスを修復する役割を担わせていただきました。この当店の技術を、次の100年に向けて、しっかりと受け継げるものとして世界中に広めていきたいと考えます。
それにしても真珠って、本当に良いものですね。
良い真珠って、本当に長持ちする物なのですね。
100年前の真珠ネックレス…
これからも大切になさってくださいませ。
(注1)黄ばみをとることはできません。
(注2)ご家族も事の真相はご存知ではないそうです。